さまざまな分野で活躍する人々への「READY」な状態を紐解くインタビューを通じて、日々の活動のマインドシフトをサポートするメディア“PEOPLE” by NEUTRALWORKS.。今回お話を伺ったのは、福岡県糸島でよもぎと薬草暮らしのブランド「- suu – 」を手がける佐々木美帆さん。彼女が作る微発酵のよもぎ茶は、その豊かな味わいで飲む人の心に寄り添い、多くの人に愛されています。現在は2児の母、妻、そして経営者として忙しい日々を送る中で自然とともに築き上げてきた哲学や、毎日の生活で見つけた小さな発見など、今の活動の背景にある想いについて伺いました。

Chapter

01
自然との触れ合いが導き出す、よもぎ茶の豊かな味わい

── よもぎと薬草のブランド「– suu –」を始めることになった経緯を教えてください。
糸島に移住した頃、散歩で田んぼのあぜ道を歩く中で、最初は植物の名前もわからず、ただの葉っぱにしか見えなかったんです。それでも、よもぎやドクダミだけは見覚えがありました。小さい頃、母と多摩川沿いでよもぎを摘み、よもぎ団子を作っていた記憶が体のどこかに残っていたのかもしれません。
ある日、散歩中に道端のよもぎと目が合った気がして、「食べられるなら試してみよう」と思い立って摘んでみました。それを乾燥させて、キッチンで煎ってお茶にしてみたのが「- suu – 」の始まりです。自分で淹れたよもぎ茶を飲んだ時、その美味しさに驚きました。それ以来、植物の名前や使い方を学ぶうちにあらゆる植物が目に留まるようになり、何気なく歩いていた田舎道の景色が、モノクロからフルカラーに変わるような感覚を覚えました。
── 幼少期の体験が現在の活動に繋がっているのですね。
まさにそうですね。「三つ子の魂百まで」という言葉通り、小さい頃の原体験が大人になって自然と芽吹いたのだと思います。私の家族は、自然の中で見つけた植物を料理に使ったり、湧水を汲んでお茶に入れたりと、自然の恵みを生活に取り入れていました。そうした記憶が、糸島での暮らしを通じて引き出されたのだと思います。
これまでは「しなければならないこと」を優先していましたが、いろんな経験を重ね、糸島の自然に触れる中で少しずつ心が解きほぐされ、自分が本当にやりたいことに自然と手が動くようになりました。植物を摘み、季節のお茶や料理を作ること。それが私にとっての「やりたいこと」だったんです。
──「– suu –」のよもぎ茶の豊かな味わいは、どのように生み出されているのでしょうか?
「- suu -」のお茶に使うよもぎは、糸島の山の中で育てています。その味わいの特徴は、よもぎを微発酵させていること。この微発酵により、よもぎから柔らな味わいと、甘い香りを引き出しています。そこへ、野で摘んだ植物たちや選りすぐりのハーブやスパイスを合わせ、お茶に仕立てています。
味のインスピレーションは、日々の自然との触れ合いから得ています。青い海を眺めたり、裸足で波を感じたり、自由に野草を摘み歩く喜びを感じたり、満月の美しさに心動かされたりする瞬間に、「こんな味のお茶があったら素敵だな」「こんな香りと出会いたい」とイメージが湧いてくるんです。その感覚や色、味、香りを再現するために、植物たちとじっくり向き合い、試行錯誤を重ねながら形にしています。
よもぎ茶の香りを嗅ぐ
よもぎ茶
「- suu -」のよもぎ茶は、すべてノンカフェイン。お茶へ調合している植物たちはすべて野に自生する天然のもの、あるいはオーガニック・農薬不使用栽培されたもの。

02
住む場所も仕事も、自分で選択していい

佐々木さん
よもぎ茶を入れる佐々木さん
糸島の海
── 日本やアメリカでの生活を経て糸島に移住されましたが、その背景にはどのような経緯があったのでしょうか?
東京で獣医として働いていた頃、日々の忙しさに追われながら「これが本当に自分の望む人生なのか?」と自問することが増えていました。毎日仕事に追われ、週末はその疲れやストレスを発散するだけの生活にどこか違和感を覚えていたんです。そんな時、思い切って渡米することに。そこでは現地のベンチャー企業を手伝うことになりました。幼少期から動物が大好きで「獣医さんになる」と決めていた私にとって全く想定外の仕事でしたが、やってみると楽しくて、新しい人生の選択肢を知るきっかけになりました。
新しい環境で仕事をしながら、多様な価値観や生き方に触れる機会を得たことで、「人生は自分で選んでいいんだ」ということに初めて気付いたんです。それなら、住む場所も自由に選べるはずだと思い、私の名前に使われているヨットの「帆」にも通じる海辺の暮らしを求めてGoogle Mapを検索。辿り着いたのが糸島でした。
── 自分のやりたいことを優先するには勇気が必要だと思います。その中で迷いや葛藤はありましたか?
当時の私は、迷いや葛藤よりも、「これはやってみたい」「ワクワクする」という気持ちが勝っていましたね。何かに出会ってしまったような感覚というか、「これをやらない選択肢はない」という思いに突き動かされていました。ただ、その一方で「自分の楽しさだけでものを作っていていいのだろうか」という別の意味での葛藤がありました。でも、それも自然の中での暮らしやお茶作りを続ける中で、少しずつ解消されていきましたね。
── その楽しさが、“誰かによもぎ茶の心地よさを届けたい”という思いに変わったきっかけは何でしたか?
これまでの人生は、「何かを成し遂げなければ」「ちゃんとしなければ」という思いに縛られて、自分がやりたいことを素直に追求するという発想自体が、そもそも頭の中にありませんでした。でも、植物に出会った時、心が強く動かされて、「楽しい」と感じたんです。その感覚に導かれるまま、何年も植物と向き合い続け、心の赴くことだけに没頭する時間を過ごしてきました。
創業7年目になる今、自分のやりたいことで心が満たされていると実感しています。その結果、これまで感じてきた心地よさを他の人にも届けたいという思いが自然と生まれたんです。それは、「人のために何かをする」という意識よりも、純粋に与えることそのものに喜びを感じるようになった、という感覚に近いかもしれません。
糸島の風景
山の中の植物

03
五感をひらき、心を整える時間をつくること

── 糸島で暮らすようになって、どのような変化がありましたか?
一番の変化は、「五感が開いた」ことですね。都心に住んでいた頃は、満員電車で通勤をし、週末は買い物や飲み会で疲れやストレスを発散する日々でした。それなりに楽しかった反面、今振り返ると自分の五感が閉じていたと思います。
糸島での暮らしを始めてから、自然の中に身を置くことで、香りや色、肌触りといった感覚に敏感になりました。「これが心地よい」「これは苦手だ」といった自分の中の小さな声を、しっかり感じとれるようになったんです。五感を通じて、今まで気づけなかった自分らしさを見つけられるようになりました。
── 仕事や子育てに追われる中で、ココロとカラダのバランスが取れていないと感じる時はありますか?そんな時は、どのように切り替えていますか?
私にとってのサインは“呼吸”です。呼吸が浅くなったり、無意識にスマホを触る時間が多くなったりしている時、心身の負担を感じます。そんな時は、今目の前の瞬間に集中することを心がけています。お茶の香りや味、目の前の相手との会話に意識を向けることで、過去や未来への不安から解放され、心が整理される感覚があるんです。そんな風に、一瞬一瞬を味わうことで、自分を整えていています。
これは、出産を経験してから身につきました。子どもの幸せを何よりも願った時、まずは自分が幸せでいることが子どもの幸せに繋がることに気づきました。自分の心と、改めて向き合い直そうと決意した瞬間です。
日々、子どもの目覚ましい成長を目の当たりにしていますが、その一瞬一瞬を逃したくないからこそ、一緒にいる時間を1秒でも長く笑顔で過ごすことを心がけています。仕事と子育ての両立は今でも葛藤の日々ですが、悩んでる間にも子どもたちは成長し続ける。だからこそ、毎日“今”という瞬間に没頭する練習を続けています。
── 心の平穏を保つために、日々どのような工夫をしていますか?
自分の感情を深掘りすることを大切にしています。同じ出来事でも、感じ方や反応は人それぞれ。それは、感情が自分自身の捉え方に起因しているからだと思うんです。逆に言えば、自分の捉え方次第で世界の見え方はいくらでも変えられるはず。例えば、イライラしたり落ち込んだりした時、「何があったか」だけでなく、「なぜそう感じたのか」という自分の感情の根本に意識を向けます。すると、その感情が自分の思い込みや過去の経験から生まれていることに気づくこともあります。運転中や子供の寝かしつけの間など、日常のちょっとした時間に自分の心に問いかけることで、不思議と気持ちが軽くなるんです。
こうした内省の時間を持つことが、心の平穏を保つことに繋がっていると感じています。
自然に触れている佐々木さん
森の中
糸島の景色をみる佐々木さん

04
誰かにそっと寄り添えるお茶を届けていきたい

猫となごむ佐々木さん
お茶を入れている佐々木さん
── 2児の母、妻、経営者と多くの役割を抱える日々の中で、どのように周りの助けを受け入れながら日々を乗り越えていますか?
常に葛藤はあります。例えば、子どもが風邪をひいて家族全員にうつった時など、家庭も仕事も回らなくなることもあります。そんな時は、すべてを放り出して「子どもが大きくなるまでは、仕事はしないほうがいいのかな」と思うこともあるんです。でも、私にとって「- suu – 」は一人目の子どものように大切な存在だから、簡単に放り出すわけにはいきません。それは、自分自身を大切にしていないということでもありますから。
そういう葛藤の中で、周りに助けを求めることができるようになりました。例えば、「もう無理、ご飯作れないから助けて!」と。実際、これまでたくさんの人に食事を届けてもらいました。笑 でも、それがすごく大事なんですよね。「大丈夫?」と聞かれた時、つい「ありがとう、大丈夫」と断ってしまう人も多いと思いますが、私はその愛をきちんと受け取るようにしています。全身全霊で「ありがとう」と言って受け取ると、助ける側も助けられる側も幸せになれるんです。そして、その愛はまた他の誰かを助ける時に返せばいい。
社会では一人で何役もこなさなければならない状況がありますが、少しずつ助け合いの輪を広げることが大事だと感じています。友人や家族、近所の人を巻き込んで、優しさのキャッチボールをする。受け取ったらまた返す。この繰り返しを重ねることで、ずいぶん生きやすくなりました。
── 今後はどんな未来を見据えていますか?
自分の子供だけでなく、すべての子どもたちに幸せになってほしいと願っています。そのためには平和が何よりも大切で、平和の始まりは一人ひとりの心の中に平穏があることだと思うんです。心に平穏があると少し余裕が生まれて、自分にも他人にも優しくなれる。それが波紋のように広がっていくことが重要だと思っています。
お茶を通じてそれをサポートできるなら、それが私の役割です。お茶ができることは小さいかもしれませんが、しんどい時にそっと寄り添える存在でありたい。そして、人が本来持つ元気になれる力や、自然体で生きる力を引き出すきっかけになればと思っています。

05
佐々木さんにとってREADYな状態とは、どのような状態ですか?

感じていること、言っていること、やっていることが一致している時。

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    ソプラナー/ ライトウォームスウェットモックネックKSU24310¥17,600Buy

06
佐々木さんの「READY」を作るためのアクション

01. 毎朝温かいお茶を飲むこと

一日のスタートは、できるだけココロとカラダを緩やかに目覚めさせる時間にしたいと思っています。そのために、朝はカフェインの入っていないオーガニックなお茶を選びます。特に、体を温める効果の高いよもぎ茶は、体の巡りを良くしてくれて、朝の心地よいスタートに欠かせない存在です。

02. 自然の中を散歩すること

夕方は野草散歩に出かけて、自然と触れ合う時間を大切にしています。この時間は、閉じていた感覚が少しず目覚め、自分自身をニュートラルな状態に戻すリセットのようなもの。散歩を通じて自分の心の声を聞くことで、自分らしさを取り戻すことができます。

03. よもぎピローで首元を温めること

朝起きた時に首回りが冷えていることが多いので、よもぎピローで首元を温めるのが日課です。「- suu – 」のよもぎピローは、よもぎをはじめ、8種類の穀物やハーブ、薬草を養生学の観点からブレンドしています。電子レンジで1分半温めるだけなので、忙しい朝でも手軽に使えてとても便利なんです。これを首に巻いて、お茶を飲みながら体を温めつつ、育児や家事をするのが毎朝のルーティンです。

04. ストレッチと深呼吸の時間

朝と夜のストレッチも欠かせません。お天気がいい日は窓を開けて、深呼吸で気分をリフレッシュしてからストレッチをすることが多いです。夜は赤ちゃんのベビーマッサージと一緒に自分もストレッチすることで、親子の時間を楽しみながら効率的に体をほぐしています。

佐々木美帆 Miho Sasaki

よもぎと薬草暮らしのブランド「- suu – 」主宰。
東京都世田谷区出身。幼少期から自然に親しみ、数度の渡米と帰国を経て、獣医やIT業界での経験を積む。自分らしい生き方を模索する中で糸島に移住し、自然と共生する暮らしをスタート。野草を摘み、お茶にすることを始めたのがきっかけとなり、よもぎと薬草暮らしのブランド「- suu – 」を立ち上げる。土地や人に負担をかけないよもぎの栽培、生産を行い、自然のインスピレーションに導かれ生きることに寄り添うようなお茶作りを行う。現在は、0歳と2歳の子どもの母として、育児と仕事の両立に奮闘中。
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佐々木美帆 Miho Sasaki

“PEOPLE” by NEUTRALWORKS. MOVIE について

今回の佐々木美帆さんの取材を収めた“PEOPLE” by NEUTRALWORKS. MOVIEを公開しています。
Web上では表現しきれない空気や時間をお届けできればと思っています。

前編
後編


編集後記

福岡県糸島にある佐々木さんのご自宅兼工房で、2日間にわたる取材がスタート。佐々木さんが日頃から訪れている散歩道や、心地よいそよ風が吹く海辺、そしてよもぎ茶を仕込む工房を訪れながら、糸島の豊かな自然と調和する佐々木さんのライフスタイル、そして「- suu – 」の世界観に触れることができた特別な時間でした。散歩道では、佐々木さんが足元に咲く植物を一つひとつ指差しながら、それぞれの季節や時間帯による表情の変化から、歴史的な利用法や味わいまで丁寧に教えてくださいました。一見、ただの田舎道に見える風景も、佐々木さんの言葉とともに見れば、鮮やかに彩られたカラフルな世界へと一変。自然がもたらす恵みの豊かさを改めて感じました。「- suu – 」の運営や育児に追われる日々の中、自身のニュートラルを探し続ける佐々木さん。その姿勢には、誰もが共感できる葛藤と、糸島での暮らしから得た穏やかな心のバランスが共存しています。ぜひ、美しい写真とともに、佐々木さんの思いに触れてもらえたら嬉しいです。その言葉と風景が、あなたの心にそっと寄り添うはずです。

Publication date: 2025.1.31
Photographer: Yuka Ito
Interviewer & Writer: Yukari Fujii